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【ホロコーストを知るために見るべき映画14選】なぜこんな悲劇が起きた?

【ホロコーストを知るために見るべき映画14選】なぜこんな悲劇が起きた?

「ホロコーストについて知りたいけど、何から学べばいいかわからない…」

「歴史の勉強は少し苦手。でも、楽しみながら教養は身につけたい」

そんな風に思ったことはありませんか?

第二次世界大戦中、ナチス・ドイツによって行われたユダヤ人大量虐殺「ホロコースト」

人類の歴史における大きな悲劇の一つですが、教科書だけではその実像を深く理解するのは難しいかもしれません。

そんなときにこそおすすめしたいのが、映画やドラマといった映像作品です。

心を揺さぶる物語を通して、当時の人々の苦悩や葛藤、そして希望を追体験することで、歴史的な出来事をよりリアルに、そして深く心に刻むことができます。

この記事では、「ホロコースト」をテーマに描かれた数多くの映画作品の中から、歴史を学ぶ上で必見の名作から話題の最新作まで13本を厳選してご紹介します。

この記事を読めば、

  • どの作品がホロコーストのどんな側面を描いているのかがわかる
  • 作品の背景にあるホロコーストの歴史の流れをざっくり掴める
  • 「全体像を知りたい」「一人の人生に寄り添いたい」など、今のあなたの気分にぴったりの一本が見つかる

難しい歴史の勉強も、物語の力を借りれば、きっと知的好奇心を満たす面白い学びの時間に変わるはず。

さあ、あなたも映像作品をきっかけに、未来のために知っておきたい歴史の扉を開いてみませんか?


目次

「ホロコースト」を描いたおすすめ映画14選

雪の中の強制収容所
スクロールできます
タイトル公開年監督時間数(分)
シンドラーのリスト1993スティーヴン・スピルバーグ195
SHOAH ショア1985クロード・ランズマン566
戦場のピアニスト2002ロマン・ポランスキー148
ヒトラーのための虐殺会議2022マッティ・ゲショネック114
サウルの息子2015ネメシュ・ラースロー107
関心領域2023ジョナサン・グレイザー106
アウシュヴィッツの生還者2021バリー・レヴィンソン129
縞模様のパジャマの少年2008マーク・ハーマン95
ディファイアンス2008エドワード・ズウィック136
アウシュヴィッツ・レポート2020ペテル・ベブヤク94
マウトハウゼンの写真家2018マル・タルガローナ110
杉原千畝 スギハラチウネ2015チェリン・グラック139
復讐者たち2020ドロン・パズ、ヨアヴ・パズ110
私の親友、アンネ・フランク2021ベン・ソムボハールト103

シンドラーのリスト

タイトルシンドラーのリスト
原題Schindler’s List
公開年1993年
制作国アメリカ
時間195分
監督スティーヴン・スピルバーグ
出演リーアム・ニーソン、ベン・キングズレー、レイフ・ファインズ、キャロライン・グッドール、ジョナサン・セガール、エンベス・デイヴィッツ、マーク・イヴァニール、アンジェイ・セヴェリン
動画配信サービスU-NEXT
レビューサイト
評価
総合評価90.10
国内
レビュー
サイト
国内総合評価4.30
Filmarks4.2
Yahoo!映画4.4
映画.com4.3
海外
レビュー
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海外総合評価94.20
IMDb9.0
Metacritic
METASCORE
95
Metacritic
USER SCORE
9.1
RottenTomatoes
TOMATOMETER
98
RottenTomatoes
Audience Score
97

スティーヴン・スピルバーグ監督による名作で、実在した実業家オスカー・シンドラーが約1,200人のユダヤ人を救った実話を描きます。

第二次世界大戦中のナチス・ドイツ占領下のポーランド、クラクフを舞台に、加害と救済という両面からホロコーストの現実を知ることができる作品です。

この主人公、シンドラーはナチ党員であり、最初は戦争を利用して利益を上げることしか考えてません。

ところがユダヤ人会計士との出会いやナチスによるユダヤ人虐殺の現実を目の当たりにする中で、最後には私財を投じてまで救おうと変化していく姿が感動を呼びます。

スティーヴン・スピルバーグ監督による、ほぼ全編モノクロの映像が歴史の重みを伝えます。

あらすじ

第二次世界大戦下のポーランド。

ナチス党員のドイツ人実業家オスカー・シンドラーは、安価な労働力としてユダヤ人を自身の工場で雇い入れ、事業を拡大させていた。

当初は金儲けしか頭になかった彼だが、ユダヤ人会計士シュターンとの交流や、ゲットー(ユダヤ人居住区)での非人道的な迫害を目の当たりにするうち、ユダヤ人を救うという使命感に目覚めていく。

彼は私財をなげうち、自身の工場で働くユダヤ人たちのリストを作成し、彼らの命を絶滅収容所から救い出そうと奔走する。


SHOAH ショア

タイトルSHOAH ショア
原題SHOAH
公開年1985年
制作国フランス
時間566分
監督クロード・ランズマン
出演クロード・ランズマン、シモン・ズィンメル、シュタニスワフ・シュムルク、フランツ・グラス、エイダ・ライトマン
動画配信サービス
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評価
総合評価89.93
国内
レビュー
サイト
国内総合評価4.43
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Yahoo!映画4.6
映画.com4.5
海外
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海外総合評価91.20
IMDb8.7
Metacritic
METASCORE
99
Metacritic
USER SCORE
7.3
RottenTomatoes
TOMATOMETER
100
RottenTomatoes
Audience Score
97

クロード・ランズマン監督による9時間超のドキュメンタリー。

ホロコーストの生存者、ナチス関係者、虐殺の目撃者へのインタビューを中心としたドキュメンタリーです。

歴史の記録として唯一無二の価値を持つ作品と言えるでしょう。

記録映像や再現ドラマを一切使わず、現在の風景と関係者の「言葉」だけでホロコーストの全体像に迫るという画期的な手法で制作されています。

生々しい証言が積み重なることで、歴史の教科書では決して感じることのできない、虐殺のリアルな実態と人々の記憶が浮かび上がってきます。

あらすじ

11年の歳月をかけて完成された超大作ドキュメンタリー。

ナチスの絶滅収容所から奇跡的に生還したユダヤ人、虐殺に関わった元ナチス親衛隊員、そしてユダヤ人が収容所へ送られる様子をただ見ているしかなかったポーランド人農夫など、膨大な数の人々の証言を記録。

過去の映像資料を一切使用せず、現在の彼らの言葉と、事件の舞台となった場所の現在の姿を映し出すことで、ホロコーストの恐るべき真実に迫る。


戦場のピアニスト

タイトル戦場のピアニスト
原題The Pianist
公開年2002年
制作国フランス、ドイツ、ポーランド、イギリス
時間148分
監督ロマン・ポランスキー
出演エイドリアン・ブロディ、トーマス・クレッチマン、エミリア・フォックス、ジュリア・レイナー、エド・ストッパード、フランク・フィンレー、ミハウ・ジェブロフスキー
動画配信サービスU-NEXT/Amazon Prime
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評価
総合評価89.93
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国内総合評価4.43
Filmarks4.2
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海外総合評価91.20
IMDb8.7
Metacritic
METASCORE
99
Metacritic
USER SCORE
7.3
RottenTomatoes
TOMATOMETER
100
RottenTomatoes
Audience Score
97

ポーランドのユダヤ人ピアニスト、ウワディスワフ・シュピルマンの壮絶な生き残りの記録を映像化。

舞台は第二次世界大戦中のナチス・ドイツ占領下のポーランド。

収容所行きを免れた主人公はワルシャワ蜂起を目撃し、ナチスの報復により廃墟となった街で孤独に生き延びる苦闘を描きます。

ナチスの迫害により家族と引き離され、ワルシャワ市内の隠れ家を転々としながら孤独な逃亡生活を送る主人公の視点で、戦争の過酷さと、そんな中でも生きる希望となった音楽の力が描かれます。

ドイツ人将校との出会いの場面は特に印象的です。

あらすじ

1939年、ポーランドのワルシャワで活躍するユダヤ人ピアニスト、シュピルマンの日常は、ドイツ軍の侵攻によって一変する。

ユダヤ人はゲットーへ強制移住させられ、やがて彼の家族も絶滅収容所へと送られてしまう。

奇跡的に一人生き残ったシュピルマンは、知人の助けを借りながら廃墟と化したワルシャワ市内で息を潜めて生き延びる。

飢えと孤独に苦しむ彼だったが、ある日、一人のドイツ人将校に見つかってしまう。


ヒトラーのための虐殺会議

タイトルヒトラーのための虐殺会議
原題Die Wannseekonferenz/THE CONFERENCE
公開年2022年
制作国ドイツ
時間114分
監督マッティ・ゲショネック
出演フィリップ・ホフマイヤー、ヨハネス・アルマイヤー、マキシミリアン・ブリュックナー、ジェイコブ・ディール、ゴーデハート・ギーズ、アーノルト・クラビッター、フレデリック・リンケマン
動画配信サービスU-NEXT/Amazon Prime/Hulu/DMM TV/Lemino/FOD
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評価
総合評価86.13
国内
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国内総合評価4.13
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海外総合評価89.60
IMDb8.5
Metacritic
METASCORE
85
Metacritic
USER SCORE
8.7
RottenTomatoes
TOMATOMETER
95
RottenTomatoes
Audience Score
96

1942年1月20日、第二次世界大戦中のドイツ・ベルリン郊外が舞台です。

ナチス親衛隊(SS)の高官ラインハルト・ハイドリヒが議長を務め、ユダヤ人に対する組織的な大量虐殺を決定した、歴史的に有名な「ヴァンゼー会議」の全貌を描いています。

実際に発見された会議の議事録に基づいて、わずか90分間の密室での会話劇だけで構成されている点が最大の特徴です。

虐殺や暴力のシーンは一切ありません。

しかし、1100万人ものユダヤ人を絶滅させるという恐ろしい計画を、まるで企業の事業計画のように効率的に、そして事務的に議論していく様子が、かえってナチスの狂気と「悪の凡庸さ」の恐ろしさを観る者に突きつけます

あらすじ

1942年、ベルリン郊外のヴァンゼー邸に、ナチスの主要官僚15名が集められる。

議題は「ユダヤ人問題の最終的解決」。ユダヤ人をいかにして効率的に絶滅させるかが、官僚的な口調と書類のやり取りの中で淡々と決められていく。

表面上は冷静な会議でありながら、その裏で人類史上最も恐ろしい計画が静かに承認されていく――。


サウルの息子

タイトルサウルの息子
原題Son of Saul
公開年2015年
制作国ハンガリー
時間107分
監督ネメシュ・ラースロー
出演ルーリグ・ゲーザ、モルナール・レヴェンテ、ユルス・レチン、マルシン・ツァーニク、トッド・シャルモン、ジョテール・シャーンドル
動画配信サービス
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総合評価76.63
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レビュー
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国内総合評価3.53
Filmarks3.7
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映画.com3.4
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海外総合評価82.60
IMDb7.4
Metacritic
METASCORE
91
Metacritic
USER SCORE
7.3
RottenTomatoes
TOMATOMETER
96
RottenTomatoes
Audience Score
79

1944年のアウシュヴィッツ=ビルケナウ絶滅収容所を舞台に、ゾンダーコマンド(ユダヤ人による死体処理係)として働くユダヤ系ハンガリー人、サウルの二日間を描いています。

極限の恐怖を体感させる映像表現が特徴。

全編を通して主人公サウルの視点にカメラが固定され、観客はまるで彼と共に行動しているかのような没入感を体験します。

ガス室での虐殺といった直接的な描写を避けながらも、ぼかされた背景や音によって収容所の惨状をリアルに感じさせる演出が国際的に高く評価されました。

あらすじ

アウシュヴィッツ絶滅収容所で、同胞の死体処理を行う特殊部隊「ゾンダーコマンド」として働くサウル。

感情を押し殺し、日々淡々と作業をこなしていたある日、ガス室で生き残った少年が目の前で殺されるのを目撃する。

その少年を自分の息子だと思い込んだサウルは、ユダヤ教の教えに則って彼を丁重に埋葬するため、ラビ(ユダヤ教の聖職者)を探し、収容所内を奔走し始める。


関心領域

タイトル関心領域
原題The Zone of Interest
公開年2023年
制作国イギリス、ポーランド、アメリカ
時間106分
監督ジョナサン・グレイザー
出演クリスティアン・フリーデル、ザンドラ・ヒュラー、ラルフ・ハー、エリー・ポッツ
動画配信サービスAmazon Prime
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評価
総合評価75.97
国内
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国内総合評価3.47
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海外総合評価82.60
IMDb7.3
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7.6
RottenTomatoes
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93
RottenTomatoes
Audience Score
79

第二次世界大戦中、アウシュヴィッツ強制収容所の所長ルドルフ・ヘスとその家族が、収容所の壁一枚隔てた隣の家で送る穏やかな日常を描いています。

虐殺の場面を直接的に描かず、壁の向こうから聞こえてくる銃声や叫び声、そして立ち上る煙といった音と映像の対比によって、すぐ隣にある地獄に「無関心」でいられる人間の恐ろしさ、「悪の凡庸さ」を観る者に突きつけます。

あらすじ

アウシュヴィッツ強制収容所の所長ルドルフ・ヘスと妻のヘドウィグは、収容所の隣にある、美しい庭付きの一軒家で5人の子供たちと共に暮らしている。

彼らの家には、収容所から聞こえてくる銃声や悲鳴、そして焼却炉から絶えず立ち上る煙が届いている。

しかし、家族はその異常な環境に何の関心も示すことなく、誕生日を祝い、ピクニックに出かけるなど、幸せで平和な日常を謳歌していた。


アウシュヴィッツの生還者

タイトルアウシュヴィッツの生還者
原題The Survivor
公開年2021年
制作国アメリカ
時間106分
監督バリー・レヴィンソン
出演ベン・フォスター、ヴィッキー・クリープス、ビリー・マグヌッセン、ピーター・サースガード、ダル・ズーゾフスキー、ジョン・レグイザモ、ダニー・デヴィート
動画配信サービスU-NEXT/Hulu
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評価
総合評価75.33
国内
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国内総合評価3.83
Filmarks3.7
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映画.com3.8
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海外総合評価74.00
IMDb6.7
Metacritic
METASCORE
71
Metacritic
USER SCORE
6.8
RottenTomatoes
TOMATOMETER
86
RottenTomatoes
Audience Score
78

アウシュヴィッツ強制収容所で、ナチス将校の娯楽のために囚人同士でボクシングの試合を強制され、生き延びた実在のユダヤ人ボクサー、ハリー・ハフトの半生を描いています。

生き残るために同胞と戦わなければならなかったという壮絶な過去のトラウマと、戦後アメリカに渡り、生き別れた恋人を探すために再びリングに上がる彼の苦悩に満ちた人生が描かれます。

あらすじ

1949年、アメリカ。

アウシュヴィッツから生還したハリー・ハフトは、プロボクサーとして活躍していた。

彼が有名になろうとするのには理由があった。

それは、収容所で生き別れた恋人レアを探すためだった。

ある日、彼は記者からの取材に対し、自分が収容所で生き延びたのは、ナチス将校が主催する賭けボクシングで、同胞のユダヤ人を相手に勝ち続けたからだと告白する。

その告白は注目を集めるが、同時に彼を深く苦しめることになる。


縞模様のパジャマの少年

タイトル縞模様のパジャマの少年
原題The Boy in the Striped Pajamas
公開年2008年
制作国イギリス、アメリカ
時間95分
監督マーク・ハーマン
出演エイサ・バターフィールド、ジャック・スキャンロン、アンバー・ビーティー、デイヴィッド・シューリス、ヴェラ・ファーミガ、リチャード・ジョンソン、シーラ・ハンコック、ルパート・フレンド
動画配信サービス
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評価
総合評価75.30
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国内総合評価4.00
Filmarks3.9
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映画.com4.0
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海外総合評価70.60
IMDb7.7
Metacritic
METASCORE
55
Metacritic
USER SCORE
7.1
RottenTomatoes
TOMATOMETER
65
RottenTomatoes
Audience Score
85

第二次世界大戦中のドイツを舞台に、ナチス将校の8歳の息子ブルーノと、強制収容所に収容されている同い年のユダヤ人少年シュムエルとの間の、鉄条網越しの友情を描いた物語。

ホロコーストの悲劇を、何も知らない無垢な子供の視点から描くことで、大人の世界の愚かさや戦争の非情さが際立ちます。

衝撃的なラストシーンは、観る者に深い問いを投げかけます。

あらすじ

ナチス将校の父の栄転により、ベルリン郊外の家に引っ越してきた8歳の少年ブルーノ。

遊び相手もおらず退屈していた彼は、家の裏手にある森の奥に、奇妙な「農場」があるのを見つける。

そこは有刺鉄線のフェンスで囲まれ、「縞模様のパジャマ」を着た人々が暮らしていた。

フェンス越しに出会った同い年の少年シュムエルと友情を育んでいくブルーノだったが、彼らの無垢な交流は、やがて取り返しのつかない悲劇へと向かっていく。


ディファイアンス

タイトルディファイアンス
原題DEFIANCE
公開年2008年
制作国アメリカ
時間136分
監督エドワード・ズウィック
出演ダニエル・クレイグ、リーヴ・シュレイバー、ジェイミー・ベル、アレクサ・ダヴァロス、アラン・コーデュナー、マーク・フォイアスタイン、トマス・アラナ、ジョディ・メイ、ケイト・フェイ、イド・ゴールドバーグ
動画配信サービスU-NEXT/Hulu
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評価
総合評価73.00
国内
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サイト
国内総合評価3.70
Filmarks3.5
Yahoo!映画3.9
映画.com3.7
海外
レビュー
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海外総合評価72.00
IMDb7.1
Metacritic
METASCORE
58
Metacritic
USER SCORE
6.9
RottenTomatoes
TOMATOMETER
77
RottenTomatoes
Audience Score
85

第二次世界大戦中の1941年、ナチス・ドイツに占領されたベラルーシの森が舞台。

ユダヤ人狩りから逃れたビエルスキ兄弟が、ナチスに抵抗し、この森でパルチザン活動を開始します。

彼らはやがて1,200人以上の同胞を救った実話として歴史に名を残しています。

「生き残ることが復讐だ」という信念のもと、森の中に共同体を築き、ナチスに抵抗した彼らの闘いを描いた作品です。

武器を手に取り、自らの手で運命を切り開こうとする人々の力強い姿が印象的です。

あらすじ

1941年、ドイツ軍に占領されたベラルーシで、ナチスによるユダヤ人狩りが始まる。

両親を殺されたビエルスキ家の3兄弟、トゥヴィア、ズス、アザエルは、幼い頃から慣れ親しんだ森へと逃げ込む。

やがて彼らのもとには、同じように迫害から逃れてきたユダヤ人たちが次々と集まり、森の中に巨大なコミュニティが形成されていく。

リーダーとなったトゥヴィアは、飢えや寒さ、そしてナチスの脅威に立ち向かいながら、同胞たちを守り抜くことを誓う。


アウシュヴィッツ・レポート

タイトルアウシュヴィッツ・レポート
原題The Auschwitz Report
公開年2020年
制作国スロバキア・チェコ
時間94分
監督ペテル・ベブヤク
出演ノエル・ツツォル、ペテル・オンドレイチカ、ジョン・ハナー、フローリアン・パンツナー、ヤツェク・ベレール、ミハル・レジュニー
動画配信サービスU-NEXT
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評価
総合評価72.37
国内
レビュー
サイト
国内総合評価3.57
Filmarks3.6
Yahoo!映画3.6
映画.com3.5
海外
レビュー
サイト
海外総合評価73.40
IMDb6.6
Metacritic
METASCORE
79
Metacritic
USER SCORE
4.4
RottenTomatoes
TOMATOMETER
100
RottenTomatoes
Audience Score
78

スロバキアのユダヤ人収容者二人がアウシュヴィッツから脱走し、ホロコーストの実態を報告した「ヴルバ=ヴェツラー報告」を映画化。

世界が虐殺の実態を知るきっかけとなった出来事を描く。

彼らが作成した報告書(アウシュヴィッツ・プロトコル)が、約12万人のユダヤ人の命を救ったという知られざる史実を描いています。

収容所内の過酷な日常と、命がけの脱走劇の緊迫感がリアルに伝わってきます。

あらすじ

1944年4月、アウシュヴィッツ=ビルケナウ収容所。

遺体の記録係として働くスロバキア人アルフレートは、収容所で行われている大量虐殺の事実を外部に伝えるため、仲間のヴァルターと共に脱走を決行する。

仲間の囚人たちの協力を得て収容所の外に出た二人は、ひたすら故郷スロバキアとの国境を目指す。

飢えや寒さ、そしてナチスの追跡に苦しみながらも、彼らは奇跡的に救出され、赤十字の職員に収容所の恐るべき実態を告白する。

マウトハウゼンの写真家

タイトルマウトハウゼンの写真家
原題The Photographer of Mauthausen
公開年2018年
制作国スペイン
時間110分
監督マル・タルガローナ
出演マリオ・カサス、リシャルト・ファン・ヴァイデン、アライン・エルナンデス、アドリア・サラサール、エドゥアルド・ブーチ、シュテファン・バイナート、ルーベン・ユステ
動画配信サービスNetflix
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評価
総合評価68.50
国内
レビュー
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国内総合評価3.10
Filmarks3.6
Yahoo!映画
映画.com2.6
海外
レビュー
サイト
海外総合評価75.00
IMDb6.8
Metacritic
METASCORE
Metacritic
USER SCORE
7.2
RottenTomatoes
TOMATOMETER
86
RottenTomatoes
Audience Score
74

オーストリアにあったマウトハウゼン強制収容所を舞台に、収容所内で撮影された残虐行為のネガフィルムを命がけで盗み出し、ナチスの罪を後世に伝えたスペイン人収容者、フランセスク・ボワの実話を描いています。

カメラという武器を手に、ナチスの非道を記録し続けた男の勇気ある行動を描いた作品です。

収容所の記録係として働く中で、彼が目にした衝撃的な現実と、仲間たちと共にネガを外部へ持ち出そうとするスリリングな展開が見どころです。

あらすじ

スペイン内戦で敗れ、ナチス・ドイツに捕らえられた元兵士のフランセスク・ボワは、マウトハウゼン強制収容所へと送られる。

写真家としての腕を買われた彼は、収容所の記録係として働くことになる。

そこで彼は、ナチスが自分たちの娯楽のために行う処刑や、収容者たちの過酷な日常を写真に収める任務を与えられる。

ボワは、これらの写真がいつかナチスの罪を暴く重要な証拠になると信じ、仲間たちと協力して危険を冒しながらネガフィルムを盗み出し、外部へ持ち出す計画を立てる。


杉原千畝 スギハラチウネ

タイトル杉原千畝 スギハラチウネ
原題Persona Non Grata
公開年2015年
制作国スロバキア・チェコ
時間139分
監督チェリン・グラック
出演唐沢寿明、小雪、小日向文世、塚本高史、濱田岳、二階堂智、板尾創路、滝藤賢一、石橋凌、ボリス・シッツ、アグニェシュカ・グロホフスカ
動画配信サービスU-NEXT/Hulu
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評価
総合評価68.33
国内
レビュー
サイト
国内総合評価3.63
Filmarks3.6
Yahoo!映画3.7
映画.com3.6
海外
レビュー
サイト
海外総合評価64.00
IMDb6.4
Metacritic
METASCORE
Metacritic
USER SCORE
RottenTomatoes
TOMATOMETER
RottenTomatoes
Audience Score

第二次世界大戦中のリトアニアを舞台に、ナチスの迫害から逃れてきた何千人ものユダヤ人難民に、「命のビザ」を発給し続けた日本の外交官、杉原千畝の半生を描いた作品です。

極限の状況下で、外交官としての立場と、一人の人間としての良心との間で葛藤しながらも、人道的決断を下した杉原千畝の勇気と信念が描かれています。

彼を支えた妻・幸子との絆も見どころの一つです。

あらすじ

1939年、日本の外交官・杉原千畝は、諜報活動の拠点としてリトアニアの領事館に赴任する。

しかし、ナチス・ドイツのポーランド侵攻により、多くのユダヤ人難民がビザを求めて領事館に殺到する。

杉原は自らの判断で、通過ビザを発給することを決意。

閉鎖が迫る領事館で、彼は一人でも多くの命を救うため、列車が出発する最後の瞬間までビザを書き続ける。


復讐者たち

タイトル復讐者たち
原題Plan A
公開年2020年
制作国スペイン
時間110分
監督ドロン・パズ、ヨアヴ・パズ
出演アウグスト・ディール、シルヴィア・フークス、マイケル・アローニ、ニコライ・キンスキー、ミルトン・ウェルシュ、オズ・ゼハヴィ、イーシャイ・ゴーラン
動画配信サービスU-NEXT/Amazon Prime
レビューサイト
評価
総合評価62.71
国内
レビュー
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国内総合評価3.43
Filmarks3.5
Yahoo!映画3.6
映画.com3.2
海外
レビュー
サイト
海外総合評価56.75
IMDb6.0
Metacritic
METASCORE
44
Metacritic
USER SCORE
RottenTomatoes
TOMATOMETER
60
RottenTomatoes
Audience Score
63

第二次世界大戦後の1945年のドイツを舞台に、ホロコーストを生き延びたユダヤ人たちが結成した秘密組織「ナカム」が、ドイツ人に対して大規模な報復を計画したという驚くべき実話を描いています。

「目には目を、歯には歯を」という復讐の連鎖が果たして正義なのか、という重いテーマを問いかけるサスペンスフルな作品です。

ナチスへの憎しみと、人間としての倫理観の間で揺れ動く主人公たちの葛藤が描かれます。

あらすじ

1945年、ナチスの強制収容所から解放され、家族を失ったマックスは、ホロコーストの生存者たちで結成された秘密の抵抗組織に加わる。

彼らの目的は、600万人のユダヤ人を殺害したドイツ人に対し、同数の毒殺をもって報復するという壮大な復讐計画だった。

組織のメンバーは、ドイツの水道水に毒を混入させるため、水道局員になりすまして潜入する。

しかし、罪のない民間人まで巻き込む計画の実行を前に、マックスの心は大きく揺らぎ始める。


私の親友、アンネ・フランク

タイトル私の親友、アンネ・フランク
原題My Best Friend Anne Frank
公開年2021年
制作国オランダ
時間103分
監督ベン・ソムボハールト
出演ヨゼフィン・アーレントセン、アイコ・ミラ・ベイムスタボーア、ルーラント・フェルンハウト、ロッティ・ヘリングマン、シモーネ・カナリス、ステファン・デ・ウォーレ、オデール・シンガー
動画配信サービスNetflix
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評価
総合評価62.50
国内
レビュー
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国内総合評価3.00
Filmarks3.5
Yahoo!映画2.5
映画.com
海外
レビュー
サイト
海外総合評価65.00
IMDb6.3
Metacritic
METASCORE
Metacritic
USER SCORE
RottenTomatoes
TOMATOMETER
63
RottenTomatoes
Audience Score
69

『アンネの日記』で知られるアンネ・フランクと、その親友であったハンナ・ゴスラーの友情を、ハンナの視点から描いた実話に基づく物語です。

ナチス占領下のアムステルダムでの日常から、ベルゲン・ベルゼン強制収容所での悲劇的な再会までが描かれています。

世界的に有名なアンネ・フランクの、日記では描かれなかったもう一つの素顔を親友の目線で知ることができます。

戦時下においても変わることのなかった二人の少女の絆と、過酷な運命に引き裂かれる悲しみが胸を打ちます。

あらすじ

ナチス占領下のアムステルダムで、アンネ・フランクとハンナ・ゴスラーは何でも語り合える大親友だった。

しかし、ユダヤ人への迫害が激化し、アンネの一家はスイスへ亡命したと告げられ、二人は離れ離れになってしまう。

その後、ハンナも家族と共に強制収容所へ送られる。

過酷な収容所生活を送っていたある日、ハンナは有刺鉄線のフェンスの向こう側に、衰弱しきったアンネがいることを知る。


そもそも「ホロコースト」って何?

夜中に移動させられる人々

映画やドラマをより深く味わうために、まずはホロコーストの基本的な歴史の流れを簡単におさらいしておきましょう。

なぜ、どのようにして、あの悲劇が起きてしまったのか。

その背景を知ることで、作品に描かれる人々の喜びや悲しみが、より一層胸に迫ってくるはずです。


「ホロコースト」とは?

ナチス・ドイツによる国家主導の大量虐殺

ホロコーストとは、第二次世界大戦中にナチス・ドイツとその協力者によって実行された、ユダヤ人に対する計画的かつ組織的な大量虐殺(ジェノサイド)のことです。

その犠牲者は約600万人にも及ぶと考えられています。

はじめはヒトラーの歪んだ人種思想、いわゆる優生思想に基づくものでした。

しかし、人々の心の中にあったそのわずかな火は、やがてヨーロッパ中に大きく燃え広がり、やがて本当にユダヤ人を「劣等人種」と断定し、ヨーロッパから根絶やしにしようとまで行きつくのです。

これは単なる戦争の混乱の中で起きた偶発的な事件ではなく、国家の政策として、官僚機構を通じて計画的に進められた、人類史上類を見ない犯罪でした。

ナチスは虐殺を効率化するために、ガス室を備えた「絶滅収容所」をポーランドなどに次々と建設しました。

例えば、最も有名なアウシュヴィッツ=ビルケナウ強制収容所では、労働力にならないと判断された老人、女性、子どもたちは、収容所に到着してすぐガス室へ送られ、殺害されたのです。

アウシュビッツだけでも、100万人以上のユダヤ人が犠牲になったと言われています。


ユダヤ人以外にもいた多くの犠牲者

ホロコーストの犠牲者はユダヤ人だけではありません。

ユダヤ人以外にも、ナチスの優生思想に合わない人種、あるいは「社会にとって好ましくない」と見なした人々を、迫害と虐殺の対象としたからです。

ナチスは、自ら「アーリア人」が一番優れた人種だと考え、種の純粋性を保つために「有害」または「不要」な存在と見なされた人々も排除の対象とされたのです。

具体的には、政治的な信条が異なる共産主義者や社会主義者、移動生活を送るロマ(当時ジプシーと呼ばれていました)、ナチスの兵役を拒否したエホバの証人、同性愛者、そして身体や精神に障害を持つ人々などです。

これらを見れば分かる通り、必ずしも人種だけでなく、思想や宗教、障害の有無などによって差別の対象となったのです。

特に障害を持つ人々は「生きる価値のない生命」という非人道的な思想のもと、「T4作戦」と呼ばれる安楽死政策の対象となり、数十万人が殺害されたと言われています。

ホロコーストというとユダヤ人への虐殺だけと考えがちですが、こういった人々への迫害があったことは忘れてはいけません。


なぜ起きた?「ホロコースト」に至るまでの背景

第一次世界大戦後のナチス台頭が全てのはじまり

ホロコーストが起きる大きな背景には、第一次世界大戦で敗北したドイツの社会的な混乱と、その中でアドルフ・ヒトラー率いるナチス党が国民の支持を得て台頭したことがあります。

その理由は、第一次世界大戦後のドイツが、ヴェルサイユ条約によって課された莫大な賠償金や領土の喪失により、深刻な経済危機と屈辱感に苛まれていたからです。

ハイパーインフレにより国民の生活は困窮し、社会は不安定化しました。

このような状況下で、ナチスは「強いドイツの復活」「ヴェルサイユ条約の破棄」といった分かりやすいスローガンを掲げ、国民の不満の受け皿となることで急速に勢力を拡大しました。

ナチスは巧みなプロパガンダ(政治宣伝)で、経済危機の原因はユダヤ人にあると主張し、国民の怒りの矛先を彼らに向けさせました。

これにより多くの国民の支持を集めたヒトラーは、1933年に合法的に首相に就任し、その後すぐに独裁的な権力を掌握していきました。

ドイツでヒトラーが率いるナチス党が強大な権力を得たことが、数々の悲劇を生み出すきっかけとなったのです。


イデオロギーを流布することで人種差別を正当化

ナチスはヨーロッパに古くから根付いていたユダヤ人への偏見、いわゆる「反ユダヤ主義」を巧みに利用し、それを人種差別的なイデオロギーへと発展させました。

その理由は、国民の間にくすぶる不満や不安を特定のグループ(スケープゴート)に向けさせることで、社会を統制しやすくするためでした。

ナチスは、ユダヤ人を宗教的な集団としてではなく、生物学的に劣った「人種」として定義し直し、「優等」なアーリア人種とドイツ社会を脅かす存在だという偽りの物語を作り上げ、国民の憎悪を煽りました。

その具体例として、学校教育やプロパガンダ映画、ポスターなどを通じて、ユダヤ人を「貪欲な金貸し」や「社会を蝕む寄生虫」といった悪意に満ちたイメージで繰り返し描き、差別を正当化しました。

このような徹底した情報操作により、多くのドイツ国民はユダヤ人への差別や迫害を容認するようになっていったのです。

このイデオロギーはドイツ国内から、やがて占領地へと広まっていきます。


法律を作りユダヤ人迫害を「合法化」

1935年に制定された「ニュルンベルク法」は、ユダヤ人を法的にドイツ社会から完全に排除し、その権利を奪うものでした。

ユダヤ人に対する差別を、「個人の感情の問題」から、「国家が制度として保証する確定的なもの」へと変える必要があると、ナチスドイツは考えたからです。

この法律により、ユダヤ人はドイツ国民としてのあらゆる権利を剥奪され、社会的に完全に孤立させられました。

例えばユダヤ人は選挙権を失い、公共施設の利用や教育機会も制限されるなど、日常生活に直接的な影響を受けました。

さらに、「ドイツ人の血と名誉を守るための法律」では、ユダヤ人と非ユダヤ人との結婚や恋愛関係さえも犯罪とされます。

違反者には厳しい罰が科されるなど、個人の私生活にまで国家が介入する異常な事態となったのです。

「合法化される」ことで、ユダヤ人への迫害は正当化され、社会全体でユダヤ人迫害のための基盤が全て整ってしまうのです。

こづかい父さん

この記事で紹介している映画はどれでも、ユダヤ人が日常生活から徐々にはじき出されていく様子をリアルに描いています。
残酷でひどい強制収容所のシーンだけでなく、こういった「少しずつ変わっていく日常」についても、注目して鑑賞してみてくださいね。

次のセクションでは、ナチスドイツがどうやって事務的にホロコーストを実行していったのかを解説していきます。


迫害から虐殺へ…「最終的解決」までの流れ

ホロコーストは、段階的な迫害から最終的な大量虐殺へと発展しました。

当初は差別や強制移住にとどまっていた政策が、戦争の拡大とともに「物理的な絶滅」へと転換していったのです。

具体的には、ユダヤ人を隔離するゲットー政策から始まり、ヴァンゼー会議で「最終的解決」が公式決定され、絶滅収容所での大量殺害が組織的に行われました。

その流れを解説していきます。


隔離政策のはじまり「ゲットー」

ナチスはユダヤ人虐殺の準備段階として、彼らを「ゲットー」と呼ばれる特定の居住区に強制的に隔離する政策を進めました。

ユダヤ人を一般社会から物理的に遮断し、一か所に集めて監視・管理することで、その後の絶滅収容所への移送を容易にするためでした。

ゲットーは、その後の大量虐殺に向けた重要なステップだったのです。

その具体例として、ポーランドの首都に作られた「ワルシャワ・ゲットー」が挙げられます。

約3平方キロメートルという狭いエリアに40万人以上のユダヤ人が高い壁で囲まれ、押し込められました。

劣悪な衛生環境とわずかな配給食料により、多くの人々が移送される前に餓えや病気で命を落としました。

こづかい父さん

ゲットーに集められた人たちは、その最終目的を聞かされていません。住む場所や財産に制限を設けられ、それでも、「さすがにこれ以上ひどいことにはならないだろう」と考える人が多かったのも仕方ないですよね。。。


ヴァンゼー会議と「最終的解決」

1942年1月にベルリンのヴァンゼー湖畔で開かれた「ヴァンゼー会議」において、ヨーロッパにいる全ユダヤ人を組織的に殺害する計画、いわゆる「最終的解決」が正式に決定されました。

ユダヤ人の絶滅を国家の決定事項とし、関係省庁やナチス親衛隊などの機関が連携して、具体的に虐殺を実行するための計画までもが国家の方針として決定されたからです。

この会議により、虐殺は官僚的な手続きを踏んだ行政プロセスへと変わりました。

会議の議事録には、ヨーロッパ各国のユダヤ人のリストと共に、彼らを絶滅収容所へ移送し、ガス室などで処理する計画が具体的に記されています。

この非人道的な計画が、わずか90分ほどの会議で事務的に確認されたという事実は、ホロコーストの異常性を物語っています。


「絶滅収容所」での組織的な殺害

「最終的解決」を実行するため、ナチスはポーランドの占領地などに複数の「絶滅収容所」を建設し、工業製品を生産するかのような効率性で大量虐殺を行いました。

銃殺による処刑は効率が悪く、実行する兵士への精神的負担も大きいと考えられたため、より機械的かつ大規模に殺害を行える方法が求められたからです。

その結果、殺害専用の施設としてガス室が導入され、大量の人々を一度に殺害することが可能になりました。

その代表的な例が、アウシュヴィッツ=ビルケナウ、トレブリンカ、ソビボルといった絶滅収容所です。

ヨーロッパ中から家畜用の貨物列車で運ばれてきた人々は、ここで選別され、多くがそのままシャワー室に偽装されたガス室へと誘導されました。

遺体は焼却炉で燃やされ、ナチスは組織的にその犯罪の証拠を隠滅しようとしました。

各所に作られた絶命収容所は、まさにユダヤ人を根絶やしにするための場所だったのです。


ニュルンベルク裁判とその後

戦後に行われた「ニュルンベルク裁判」で、ホロコーストに関わったナチスの主要な指導者たちが裁かれ、その罪が国際社会によって公式に断罪されました。

連合国が、ナチスが犯した残虐行為の責任を追及し、二度とこのような悲劇を繰り返さないために、法に基づいた裁きを行うことが不可欠だと考えたからです。

この裁判は、後の国際法の発展に大きな影響を与えました。

裁判では、ホロコーストが「人道に対する罪」という、それまでの国際法にはなかった新しい概念で裁かれた点が画期的でした。

法廷では、収容所の解放時に撮影された衝撃的な記録映像や、ナチス自身が残した膨大な文書が証拠として提出され、その非人道的な犯罪の全貌が世界に明らかにされました。

この結果、多くのナチス高官に死刑や終身刑などの判決が下されました。


ホロコーストにまつわる年表

年月日できごと場所詳細内容
1933年1月30日アドルフ・ヒトラーがドイツ首相に就任ドイツ(ベルリン)ナチ党政権が成立し、国家主導の反ユダヤ主義政策が始まる。ユダヤ人の公職追放など初期の差別が制度化される。
1933年3月22日ダッハウ強制収容所設置ドイツ・ミュンヘン近郊ナチスによる初の強制収容所で、政治犯や後にユダヤ人が収容対象となる。
1935年9月15日ニュルンベルク法制定ドイツ(ニュルンベルク)「ドイツ血の保護法」と「ドイツ市民法」により、ユダヤ人は市民権を剥奪され、異民族との結婚や性交を禁止される。
1938年11月9日「水晶の夜」事件(クリスタル・ナハト)ドイツ・オーストリアユダヤ人のシナゴーグ、商店、住宅が襲撃・破壊され、数百人が殺害、数千人が強制収容所に送られる。
1939年9月1日ドイツ軍がポーランド侵攻ポーランド第二次世界大戦勃発。占領地のユダヤ人はゲットーに隔離され、迫害が本格化する。
1941年6月22日バルバロッサ作戦開始ソ連領内ドイツ軍がソ連侵攻開始とともに、現地でユダヤ人の大量銃殺(アインザッツグルッペンによる虐殺)が始まる。
1941年12月8日最初の絶滅収容所稼働ポーランド・ヘウムノユダヤ人の「大量殺害の工業化」が始まり、ガス室による殺害が行われる。
1942年1月20日ヴァンゼー会議ドイツ・ベルリン「ユダヤ人問題の最終的解決(大量絶滅計画)」を公式決定。
1942年3月ベルゼック収容所で大量殺害開始ポーランドポーランド国内で絶滅収容所が次々に稼働開始する(トレブリンカ、ソビボル、アウシュヴィッツなど)。
1943年4月19日ワルシャワ蜂起ポーランド・ワルシャワ武装したユダヤ人抵抗組織がドイツ軍に抵抗するが、最終的に鎮圧され数千人が殺害される。
1944年5〜7月ハンガリーからユダヤ人大量移送ハンガリー~ポーランド・アウシュヴィッツ約43万人のユダヤ人がドイツへ移送され、アウシュヴィッツで処刑。
1945年1月27日アウシュヴィッツ解放ポーランド・オシフィエンチムソ連軍によって収容所が解放され、世界がホロコーストの実態を知る。
1945年5月8日ナチス・ドイツ降伏ヨーロッパ全域ホロコーストにより約600万人のユダヤ人が殺害されたことが明らかとなる。

教養も深まる!作品から学べる「ホロコースト」のポイント

第二次世界大戦時のワルシャワの街並み

ご紹介した作品は、それぞれ異なる時代、場所、そして人々の視点からホロコーストという悲劇を切り取っています。

ここでは、ホロコーストのどのような側面を浮き彫りにしているのか、ポイントごとに整理して見ていきましょう。


ナチス支配下の日常と迫害の現実

これらの作品からは、ホロコーストがある日突然始まったのではなく、人々の平和な日常を徐々に破壊していったその過程を知ることができます。

その理由は、ゲットーや収容所での過酷な生活に至るまでの段階的な迫害を、市井に生きる人々の目線で丁寧に描いているからです。

ユダヤ人であることを示す腕章の着用義務、職業からの追放、公園や映画館への立ち入り禁止といった一つ一つの規制が、昨日までの当たり前をいかに奪っていったか。

その理不尽さを個人の物語として追体験することで、歴史の事実をよりリアルに感じ取ることができます。

例えば『戦場のピアニスト』では、主人公シュピルマンが、以前は常連客として歓迎されていたカフェの扉に貼られた「ユダヤ人お断り」の張り紙を見て、入店をためらう場面があります。

昨日まで当たり前だった日常が、社会の空気の変化によっていとも簡単に失われてしまう恐怖が、この短いシーンから鮮烈に伝わってきます。

また、『私の親友、アンネ・フランク』では、アンネとハンナが普通の少女として恋の話に夢中になる日常と、ユダヤ人であるというだけで行動が制限されていく非日常が隣り合わせに描かれ、迫害の現実をより身近なものとして見せてくれます。


「絶滅収容所」という名の地獄

これらの作品は「絶滅収容所」が、単に人々を殺害するだけではなく、人間の尊厳そのものを徹底的に破壊するために設計された地獄であったことを教えてくれます。

なぜなら収容所という極限状況を、そこで生き、死んでいく人々の主観的な視点からリアルに描いているからです。

人々がいかにモノとして扱われ、人間性を奪われていったか。

その非人道的な実態を深く知ることで、ホロコーストの罪深さをより具体的に理解することができます。

例えば『サウルの息子』では、主人公である死体処理係の視点にカメラが固定され、ガス室での同胞の死体処理という筆舌に尽くしがたい労働が日常として描かれます。

この演出により、観客は収容所の狂気的なシステムの一部になったかのような感覚を味わい、そこで人間性を保つことがいかに困難であったかを痛感させられます。

また、『アウシュヴィッツ・レポート』は、脱走した二人の証言に基づき、収容所の構造や殺害プロセスといった「殺人工場」のシステムそのものを告発しており、その計画性と工業的な効率性に愕然とさせられます。

さらに『アウシュヴィッツの生還者』では、生き延びるために同胞と殴り合うことを強制されたボクサーの物語を通じ、ナチスが肉体だけでなく、囚人たちの精神や魂までをも破壊しようとしたことが描かれています。


死の淵で生きようとした人々の抵抗

これらの作品は、単なる無力な被害者ではなく、自らの尊厳と未来を守るために、ナチスに抵抗した人々を描いています。

なぜなら、どんな絶望的な状況下でも人間としての誇りを失わず、果敢に闘う勇気ある人々もまた当時いたからです。

一般的にイメージされがちな収容所での悲劇だけでなく、武器を取って戦ったり、後世に真実を伝えるために命がけで証拠を残したりと、抵抗の方法は様々です。

これにより、私たちはホロコーストの歴史を、受動的な悲劇としてだけでなく、能動的な抵抗の物語としても捉え直すことができます。

例えば『ディファイアンス』では、ビエルスキ兄弟が率いるユダヤ人パルチザン(武装抵抗組織)が、ベラルーシの森の中にコミュニティを築き、1,200人以上の同胞を守りながらナチスへのゲリラ戦を展開します。

「生き延びることこそが最大の復讐だ」という信念のもと、自らの手で運命を切り開こうとする彼らの姿は、ユダヤ人による武装抵抗の力強さを象徴しています。

また、『マウトハウゼンの写真家』は、主人公が収容所内で行われたナチスの犯罪の決定的証拠となるネガフィルムを命がけで盗み出し、後世に残そうと奮闘する姿を描きます。

直接的な戦闘行為だけでなく、真実を記録し、伝えるという行為もまた、ナチスの嘘と暴力に対する極めて重要な抵抗であったことを示しています。


ユダヤ人を救った「諸国民の中の正義の人々」

これらの作品は、ホロコーストという狂気が吹き荒れる中でも、自らの危険を顧みずにユダヤ人の命を救おうとした、勇気ある非ユダヤ人たちが存在したことを力強く証明しています。

なぜならこれらの映画が、ナチスに与する側、あるいは中立的な立場にいながらも、人間としての良心や正義感に従って行動した実在の人物たちの葛藤と決断を描いているからです。

彼らは「諸国民の中の正義の人々」と呼ばれ、その存在は、歴史の暗黒時代における一筋の希望の光であり、私たちに人間の善性の可能性を示してくれます。

その代表的な根拠として、まず『シンドラーのリスト』が挙げられます。

ナチス党員でありながら約1,200人のユダヤ人を救ったシンドラーが私財をなげうって作成した「命のリスト」は、一人の人間の決断がどれほど多くの命を救えるかを示す、感動的なシンボルとなっています。

また、『杉原千畝 スギハラチウネ』は、日本の外交官として「命のビザ」を発給し続け、約6,000人ものユダヤ人難民を救った杉原千畝の半生を描いています。

リトアニアを離れる列車の中から、最後の最後までビザを書き続ける彼の姿は、絶望的な状況下における良心の勝利を物語っています。


加害者側の論理と「悪の凡庸さ」

これらの作品は、ホロコーストという未曽有の犯罪が、特別な怪物や悪魔によってではなく、「悪は特別な狂気ではなく、日常や制度の中に潜むもの」であることを浮き彫りにしています。

自らの日常や職務に忠実なごく普通の人間が、思考を停止し、倫理観を麻痺させていった結果であるという「悪の凡庸さ」を私たちに突きつけるのです。

これらの映画はアウシュヴィッツの残虐行為や暴力的な場面を直接的には描きません。

代わりに、壁一枚隔てた隣で理想的な家庭生活を送る家族の日常や、国家エリートたちの会議を淡々と映し出すという、極めて斬新な手法をとっているからです。

この異常なほど「普通」な光景との対比によって、彼らの人間性の欠如と、巨大な悪がいかにして生まれるのかという本質が鋭く炙り出されます。

まず『関心領域』では、所長の妻が美しい庭で子供たちと遊び、壁の向こうから聞こえる銃声や悲鳴には全くの「無関心」を貫くことで、自らの平和な日常を守ります。

音だけで虐殺の存在を感じさせる演出が、無関心という悪の形を鋭く示しています。

一方で『ヒトラーのための虐殺会議』では、エリート官僚たちが豪華な食事をとりながら、1100万人の移送方法や殺害の効率性について、まるで企業の会議のように冷静に議論します。

ここでは怒号も狂気もなく、ただ効率や法的整合性が語られるのみ。

良心の呵責なく、ただ職務として非人道的な計画を遂行しようとする彼らの姿。

哲学者ハンナ・アーレントが提唱した、巨大な悪とは「思考停止」した凡人によってなされるという「悪の凡庸さ」の概念を、これら二つの異なるアプローチの作品が、観る者に強烈に突きつけてくるのです。

著:ハンナ・アーレント, 翻訳:大久保和郎
¥4,743 (2025/10/30 22:32時点 | Amazon調べ)

ホロコーストの全体像を捉える証言の力

  • 『SHOAH ショア』

この作品は、過去の記録映像や再現ドラマを一切使わず、生存者、加害者、そして傍観者という三者の「言葉」のみで、ホロコーストという歴史的悲劇の全体像に迫ることができると示しています。

その理由は、映像資料が与える固定化されたイメージを排し、人々の記憶から紡ぎ出される生々しい言葉に耳を傾けさせることで、観客一人ひとりの想像力に働きかけ、歴史の重みをより深く内省させる効果があるからです。

この手法により、ホロコーストが単なる過去の出来事ではなく、今なお人々の心に深く刻まれた、現在進行形の記憶であることを痛感させられます。

例えば、『SHOAH ショア』の中に登場する、元理髪師の証言シーンが挙げられます。

彼は絶滅収容所で、ガス室に送られる直前の女性たちの髪を切る仕事を強制されていました。

当時の様子を語り始めますが、途中で言葉に詰まり、涙を流してしまいます。

この「語ることの困難さ」そのものが、記録映像では決して伝わらない、彼の体験の過酷さと心の傷の深さを何よりも雄弁に物語っています。

また、元ナチス親衛隊員が虐殺を事務的な作業のように淡々と語る様子や、収容所へ向かう列車を見ていた村人たちが「何もできなかった」と当時を振り返る姿は、異なる立場から見たホロコーストの多層的な現実を浮き彫りにします。


ホロコースト後の世界と残された課題

この作品は、ホロコーストという巨大な悲劇が終結した後も、生き残った人々の心に深い傷跡と癒やしがたい憎しみを残し、「正義とは何か」「復讐は許されるのか」という極めて重い問いを後世に突きつけたことを示しています。

この映画が、戦争が終わればすべてが解決するわけではなく、むしろそこから新たな苦悩が始まるという、あまり光の当たらないホロコースト後の歴史を描いているからです。

家族や故郷、人間としての尊厳まで全てを奪われた生存者たちが、ナチスへの報復という新たな暴力に駆られていく姿は、被害と加害の境界線が揺らぐ危うさと、一度生まれた憎しみの連鎖を断ち切ることの難しさを浮き彫りにします。

復讐者たち』では、ホロコースト生存者たちが結成した秘密組織「ナカム」が、殺害された600万人の同胞のために、600万人のドイツ人を毒殺するという壮大な復讐計画を企てます。

仲間内でも「我々はナチスと同じことをするのか?」と激しい議論が交わされ、復讐という正義の実行に心が揺らぎます。

この物語は、法による裁きだけでは到底癒やされない被害者の感情と、報復という行為がもたらす倫理的なジレンマを鋭く描き出し、ホロコーストが現代にまで残した複雑な課題を観る者に問いかけます。


国内外レビューサイトの評価まとめ

強制収容所に向かう貨物列車

ここでは、ホロコーストを扱った作品について、国内外のレビューサイトでの評価を比較してご紹介します。

作品選びの参考にどうぞ!


国内外で総合評価が高い作品TOP5

国内外の映画レビューサイトでの評価を集計、ランキング化した結果、トップ5は次のようになりました。

順位タイトル国内レビュー
総合評価
海外レビュー
総合評価
国内・海外
レビュー総合
1位シンドラーのリスト4.3094.2090.10
2位SHOAH ショア4.4391.2089.93
3位戦場のピアニスト4.1389.6086.13
4位ヒトラーのための虐殺会議3.6382.3377.50
5位サウルの息子3.5382.6076.63

結論として、ランキング上位の作品は、日本国内、海外の両方のサイトで極めて高い評価を得ています。

ランキングしているのは、どれも名作と呼ばれている作品です。

その理由は、これらの作品がホロコーストの悲惨さを伝えているだけでなく、当事者の心理描写を丁寧に描き、人間性の内面に深く迫った作品だからだと言えるでしょう。

この辺りの作品は、見逃さずに鑑賞したいですね。


国内レビューサイトで評価が高い作品TOP5

日本国内の映画レビューサイトでの評価を集計、ランキング化した結果、トップ5は次のようになりました。

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順位タイトルFilmarksYahoo!映画映画.com国内レビュー
総合評価
1位SHOAH ショア4.24.64.54.43
2位シンドラーのリスト4.24.44.34.30
2位戦場のピアニスト44.24.24.13
4位縞模様のパジャマの少年3.94.144.00
5位アウシュヴィッツの生還者3.743.83.83

日本国内レビューサイトでは、歴史的事実よりも人間の内面に迫った作品がより評価が高いようです。

なぜならホロコーストによって受けた苦しみや個人の葛藤にフォーカスした作品がランクインされているからです。

とはいえ、上位3作は国内外で評価が高いことは変わりません。


海外レビューサイトで評価が高い作品TOP5

海外の映画レビューサイトでの評価を集計、ランキング化した結果、トップ5は次のようになりました。

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順位タイトルIMDbMetacritic
METASCORE
Metacritic
USER Score
RottenTomatoes
TOMATOMETER
RottenTomatoes
Audience Score
海外レビュー
総合評価
1位シンドラーのリスト9959.1989794.20
2位SHOAH ショア8.7997.31009791.20
3位戦場のピアニスト8.5858.7959689.60
4位サウルの息子7.4917.3967982.60
5位関心領域7.3927.6937982.60

海外レビューサイトでは、独自の視点でホロコーストをとらえた作品がより評価されているようです。

なぜなら単純にホロコーストの凄惨な被害だけでなく、そこにいるゾンダーコマンドや周辺の人々などの多様な視点を取り入れた作品がランクインされているからです。

より多角的な視点が評価される傾向にあるのかもしれませんね。


自分にピッタリの作品を見つけよう!目的別おすすめ

会議で議論する政府高官

ここまで様々な作品をご紹介してきましたが、「結局どれから見ればいいの?」と迷ってしまうかもしれません。

そこで、あなたの今の気分や目的に合わせたおすすめの作品を、いくつかのカテゴリーに分けてご紹介します。

【入門編】まずはホロコーストの全体像を知りたいあなたへ

ホロコーストについて学び始めたいけれど、どこから手をつければいいか分からないという方には、まず『シンドラーのリスト』を観ることを強くおすすめします。

その理由は、この映画が、ナチスによるユダヤ人迫害の始まりから強制収容所での虐殺、そして終戦による解放まで、ホロコーストの大きな流れを、一人の主人公の視点を通して体系的に理解することができるからです。

また、残虐な歴史の事実だけでなく、絶望の中にあった人間性の輝きや個人の良心の葛藤といった普遍的なテーマを描いているため、歴史に詳しくない方でも感情移入しやすく、最後まで引き込まれる構成になっています。

物語の序盤では、ユダヤ人がゲットーに隔離され、財産を没収されていく様子が描かれ、迫害がどのように日常を侵食していったかを理解できます。

中盤では、主人公シンドラーが丘の上から、モノクロ映像の中で唯一色を持つ「赤いコートの少女」を通じてゲットーでの虐殺を目の当たりにするシーンがあり、これが彼の心境を大きく変化させる転換点となります。

そして終盤、彼が作成する「命のリスト」は、絶望的な状況下でも個人の行動がいかに多くの命を救い得たかという、歴史の重要な側面を象徴しています。

このように、ドラマチックな物語の中に歴史の重要な要素が巧みに織り込まれているため、ホロコーストの全体像を深く心に刻むことができるのです。

【ポイント】最初から最後までどんな時代の流れがあったのかを知る

主人公シンドラー個人の視点を通して、ナチスによるユダヤ人迫害がどのようにエスカレートしていったのかを知り、感情移入することができる。


【歴史探求編】史実に基づいて深く学びたいあなたへ

映画を通して歴史の面白さに目覚め、より史実に忠実な形で深く学びたいという知的好奇心旺盛なあなたには、これらの作品が最適です。

その理由は、これらの映画がドラマチックな演出を加えつつも、歴史的な事実や当事者の証言、残された資料といった「一次情報」を重視して制作されているからです。

フィクションの物語を通して概要を掴むだけでなく、実際に何が起きたのか、人々は何を語ったのかという歴史の核心部分に触れることで、より立体的で深い知識を得ることができます。

まず『SHOAH ショア』は、生存者、加害者、傍観者の膨大な「証言」のみで構成されたドキュメンタリーであり、歴史の教科書では決して触れることのできない、個人の記憶の奥底に刻まれた生々しい真実に触れることができます。

次に『アウシュヴィッツ・レポート』は、実際にアウシュヴィッツから脱走した二人が作成し、12万人の命を救ったとされる「アウシュヴィッツ・プロトコル」という極めて重要な歴史資料を基にしており、知られざる史実を告発するというサスペンスフルな体験ができます。

そして『杉原千畝 スギハラチウネ』は、日本の外交官が数千人のユダヤ人を救ったという感動的な実話に基づいています。

彼の発給した「命のビザ」という実物が歴史を動かしたという事実は、個人の決断が持つ歴史的な重みを教えてくれます。

【ポイント】歴史的な事実を深く知ることで全体像をつかむ

歴史的な事実をもとに、歴史に触れるきっかけとすることができる。


【ヒューマンドラマ編】一人ひとりの物語に寄り添いたいあなたへ

歴史の大きな流れを追うよりも、過酷な時代を生きた一人ひとりの人生や感情の機微に深く寄り添いたいあなたには、これらのヒューマンドラマ作品が心に響くはずです。

その理由は、これらの作品があくまで個人の視点から、その人物が何を思い、何を感じ、どう生きたのかというミクロな物語に焦点を当てているからです。

家族愛、友情、喪失感といった普遍的なテーマを通して物語が展開されるため、私たちは歴史の向こう側にいた人々の喜びや悲しみを、まるで自分のことのように感じ、深く共感することができます。

戦場のピアニスト』では、全てを失い廃墟をさまよう主人公が、敵であるはずのドイツ人将校の前でピアノを弾くシーンがあります。

この魂を揺さぶる演奏が、敵味方という立場を超えて人間同士の心を繋ぐ瞬間は、音楽という芸術が持つ力と、極限状況下における人間の尊厳を見事に描き出しています。

また、『縞模様のパジャマの少年』は、収容所のフェンスを隔てて芽生える、ナチス将校の息子とユダヤ人少年の無垢な友情を描きます。

大人の世界の理不尽さを知らない子供たちの純粋な交流は、観る者の胸を締め付け、戦争がいかに非情であるかを静かに、しかし痛烈に訴えかけます。

そして『私の親友、アンネ・フランク』は、親友ハンナの視点から描かれることで、恋やおしゃれに夢中になる等身大の少女としてのアンネの姿を浮かび上がらせ、彼女たちの友情が戦争によって無残に引き裂かれる悲しみを生々しく伝えます。

【ポイント】被害者個人の心の動きを体感する

個人の体験を一緒に見ていくことで、当時の迫害を受けた人々の心情を推察することができる。


【サバイバル編】極限状況下での人間の強さや尊厳に触れたいあなたへ

極限状況に置かれた人間がどのようにして生き抜き、自らの尊厳を守り抜くのか、その生命力や精神的な強さに触れたいあなたには、これらのサバイバルストーリーが胸を熱くさせるでしょう。

なぜならこれらの映画が、単に運良く生き残った人々の物語ではなく、過酷な運命に対して能動的に立ち向かい、自らの意志で未来を切り開こうとする人々の力強い闘いを描いているからです。

絶望的な状況下で試される仲間との絆、失われそうな人間性を必死でつなぎとめようとする姿は、私たちに「生きる」ことの意味そのものを問いかけ、深い感動を与えてくれます。

ディファイアンス』では、ナチスから逃れたユダヤ人たちが森の中に隠れ住むコミュニティを築きます。

彼らは飢えや寒さ、そしてナチスの脅威に晒されながらも、ただ生き延びるだけでなく、その共同体の中に学校や病院を作り、結婚式を挙げるなど、人間らしい文化的な生活を営もうと奮闘します。

これは、彼らの闘いが単なる肉体的な生存ではなく、人間としての尊厳を守り抜くための精神的な抵抗であったことを力強く示しています。

一方、『アウシュヴィッツの生還者』は、収容所で同胞と戦うことを強制されたボクサーの物語です。

生きるために非情にならざるを得なかった記憶は戦後も彼を苛みますが、彼はその壮絶な過去のトラウマと向き合い、生き別れた恋人を探すという希望を胸に再びリングに上がります。

この姿は、どれほど深く傷つけられても、希望を捨てずに未来へ向かって生き抜こうとする人間の不屈の精神力を描き出しています。

【ポイント】巨悪に対する戦いに勇気をもらう

大きな時代の流れに対して、人々がどのような抵抗ができるか、そのあり方に共感することができる。


【考察編】加害者側の心理や、より多角的な視点から考えたいあなたへ

ホロコーストを深く理解するには、「被害者の悲劇」だけでなく、「加害者はなぜその行動を取ったのか」という視点を持つことが重要です。

加害者側の心理や行動原理を知ることで、人間の持つ弱さや集団心理の怖さ、そして「普通の人でも加害者になりうる」という普遍的なテーマに気づくことができます。

この視点は、単なる歴史の暗記ではなく、現代社会の道徳や判断力を考える手がかりにもなります。

これらの映画が取り上げているのは、勇気あるヒーローや分かりやすい被害者の物語ではなく、一見人々の普通の日常。

あえて居心地の悪い、倫理的に複雑な視点を採用することで、ホロコーストという悲劇の多層性や人間の心の深淵を鋭く描き出しています。

これらの作品を観ることは、時に精神的な苦痛を伴うかもしれませんが、それ以上に、人間の本質や社会の構造について深く考えさせられる、知的で刺激的な体験となるでしょう。

たとえば『関心領域』では、ホロコーストの残虐さを直接映さず、収容所の壁越しの日常を淡々と描くことで、「見ないこと」「関心を持たないこと」がいかに恐ろしいかを突きつけます。

また『サウルの息子』では、加害と被害の境界が曖昧になる極限状態が描かれ、人間の理性や感情がどこまで保てるのかを考えさせられます。

さらに『ヒトラーのための虐殺会議』は、机上の会議で大量殺人が決定されていく過程を通じ、官僚的な「仕事の延長」がいかに倫理を麻痺させるかを示しています。

このように、加害者の心理を描いた作品は、私たち自身の中に潜む危うさを見つめ直す鏡となるのです。

【ポイント】日常の裏に潜む、人間性の闇を理解する

なぜこのような悲惨な出来事が起こってしまったのか、自分なりの考えをもつヒントとなる。


まとめ

強制収容所の外壁と鉄条網
  • ホロコーストをテーマにした映画やドラマは、歴史の教科書だけでは伝わらない人々の苦悩や希望を物語の力で追体験させ、複雑な歴史的背景を感情的に深く理解するための優れた入り口となる
  • ホロコーストは、第一次大戦後の社会不安を背景に台頭したナチスが、巧みなプロパガンダで反ユダヤ主義を煽り、段階的に権利を奪い、最終的に絶滅収容所で実行した国家による組織的な大量虐殺
  • ご紹介した作品は、絶望的な状況下で抵抗した人々、命がけでユダヤ人を救った人々、そして虐殺に加担した普通の人々の心理など、被害者の視点だけでは見えないホロコーストの多層的な側面を教えてくれる
  • これらの物語を通じて過去の悲劇を知ることは、単に知識を得るだけでなく、現代社会にも通じる無関心や差別の危険性を学び、同じ過ちを繰り返さないために自分たちに何ができるかを考えるきっかけを与えてくれる

いかがでしたでしょうか。

ホロコーストという重いテーマを、様々な角度から描いた映画・ドラマをご紹介してきました。

もしかしたら、観るのに少し勇気がいると感じる作品もあったかもしれません。

でも、まずは予告編をチェックしたり、あらすじをもう一度読み返したりするだけでも、知的好奇心を満たす大きな一歩です。

幸い、今では動画配信サービスなどで、気になった作品をすぐに鑑賞することもできます。

ぜひこの機会に、あなたの心が動かされた一本を手に取ってみてください。

物語を通して誰かの人生を追体験し、歴史の痛みや希望に触れることは、ニュースを見る目や、社会で起きている出来事への考え方を、少し変えてくれるかもしれません。

歴史から得られる教養は、決して難しい知識の暗記ではありません。

それは、複雑な現代社会を生き抜き、他者を深く理解し、より良い未来を考えるための「人間力」そのものです。

映画やドラマをきっかけとした学びが、あなたの明日を、そしてこれからの人生を、より豊かに彩ってくれることを願っています。

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