「歴史から学びたい」「教養を深めたい」と思っているあなたへ。
もしかしたら、あなたは退屈な教科書や難解な専門書にうんざりしているかもしれません。
でも、歴史を知る方法は、それだけではありません。映画を通して、まるでタイムスリップしたかのように、歴史の渦中に飛び込むことができるんです。
今回ご紹介する映画は、まさにそんな一本。
『ラスト・フル・メジャー 知られざる英雄の真実』は、ベトナム戦争で兵士たちの命を救い、自らの命を捧げた一人の兵士の、30年以上も埋もれていた真実を追う感動のヒューマンドラマです。
なぜ、彼の功績は長らく認められなかったのか?
豪華な名優たちが、当時の記憶とどう向き合うのか?
この記事では、あなたがこの映画を何倍も深く楽しめるよう、ベトナム戦争の背景から、作品に隠された象徴的な意味、観客のリアルな声まで、徹底的に解説します。
歴史を知り、教養を深めるきっかけとして、そしてこの映画を「見てみたい!」と思えるような、知的好奇心をくすぐる体験を、さあ、ご一緒に。
作品概要

タイトル | ラスト・フル・メジャー 知られざる英雄の真実 |
原題 | The Last Full Measure |
公開年 | 2019年 |
制作国 | アメリカ |
時間 | 116分 |
監督 | トッド・ロビンソン |
キャスト | セバスチャン・スタン、クリストファー・プラマー、ウィリアム・ハート、エド・ハリス、サミュエル・L・ジャクソン、ピーター・フォンダ 他 |
作品概要 | 実話を基に、1966年ベトナムで多数の兵士を救った空軍救助隊員ウィリアム・ピッツェンバーガーの勇気と犠牲を描く。戦後30年近くにわたり名誉勲章授与が却下され続けた裏には、ペンタゴンの困難があった。1999年、官僚スコット・ハフマン(スタン)が調査に乗り出し、証言を集めて真実を明かす社会派戦争ドラマ。Filmarksでも「派手さはないが…心情描写中心の感動」との評価あり。 |

事前に知っておきたい歴史的背景

時代背景
ベトナム戦争は、単なる内戦ではなくアメリカとソ連の冷戦構造の中で激化した戦争です。
なぜなら、アメリカは共産主義の拡大を止めるために積極的に南ベトナムを支援し、北ベトナムと戦うことを選んだからです。
背景には第二次世界大戦後、世界を二分した資本主義陣営(アメリカ)と共産主義陣営(ソ連・中国)の対立があります。
高校世界史でも学ぶように、当時のアメリカは次々と共産主義国家が増えていく「ドミノ理論」を恐れており、これがベトナムへの軍事介入を強める大きな理由でした。
ベトナム戦争について詳しく知りたい人は、こちらの記事を参考にしてみてくださいね。

米空軍の救難部隊(パラレスキュー)について
主人公ピッツェンバーガーが所属していた「パラレスキュー」は、米空軍において特に危険な任務を担う特殊部隊でした。
なぜなら、彼らは敵地の最前線や孤立した場所で、負傷した兵士を救出するためにヘリコプターから降下し、医療処置を施しながら、安全な場所まで搬送する任務を遂行していたからです。
アメリカ空軍の中でも高度な医療知識と空挺降下技術を併せ持つ選りすぐりの兵士たち。
ベトナム戦争では、パラレスキューは多大な危険を冒しながらも、激しいゲリラ戦が繰り広げられるジャングルの中から数多くの兵士の命を救ってきました。
彼らは「誰も置き去りにしない(That Others May Live)」というモットーを持ち、まさに命がけの「最後の砦」として機能していたのです。
名誉勲章の意味
名誉勲章は、アメリカ軍において授与される最高の栄誉ある軍事勲章です。
これは、単なる功績を称えるだけでなく、究極の勇敢さ、そして自らの命を顧みない自己犠牲の精神を示した兵士にのみ授与されるからです。
極めて厳格な審査基準が設けられており、受章者はその行動が「明確かつ疑いのない、命の危険を伴う個人的な勇敢さ」であったことを証明されなければなりません。
ピッツェンバーガーは、ヘリの脱出命令を拒否し、地上に残って一人でも多くの仲間を守り抜いきました。
まさにこの基準に合致する行動が評価の対象となったのです。
この勲章の重みを知ることで、なぜ彼の授与が30年以上も議論され続けたのか、その背景にある複雑さがより理解できるでしょう。
1990年代の再評価の機運
映画が描く名誉勲章の再評価は、1990年代のアメリカにおけるベトナム戦争の「再検証」という社会的な機運の中で生じました。
その理由は、ベトナム戦争終結から20年以上が経過し、冷戦終結によって国際情勢が大きく変わる中で、戦争責任や退役軍人の苦しみを改めて考える土壌が生まれたからです。
特にこれまで埋もれていた英雄たちの功績や、当時の判断に対する疑問符が、当事者や遺族、ジャーナリストなどの努力によって提起されるようになりました。
ピッツェンバーガーのケースも、改めて真実を追求し、正当な評価を与えるべきだという動きが具体化した一例です。
この映画はその機運を背景に生まれた作品と言えます。
ストーリー・あらすじ

ストーリーの流れ
この映画は、大きく分けて二つの時間軸が交錯しながら物語が進みます。
一つは、1966年のベトナム戦争の激戦地。
航空兵ウィリアム・H・ピッツェンバーガーが自らの命を犠牲にして負傷兵の救助に奔走する姿が描かれます。
もう一つは、その30年後、国防総省の調査官スコット・ハフマンが、ピッツェンバーガーへの名誉勲章授与が却下され続けた理由を突き止めるべく奔走する現代の物語です。
ハフマンは、当時の生存者である退役軍人たちを訪ね歩き、彼らの記憶の断片を繋ぎ合わせていきます。
そしてピッツェンバーガーの知られざる真実、そして彼らの心に深く刻まれた戦争の傷と向き合います。
この調査が進むにつれて、名誉勲章却下の裏に隠された複雑な事情が明らかになり、やがては彼の功績が正当に評価されるべきだという強い動きへと繋がっていきます。
作品が伝えたいテーマ
この作品が最も伝えたい核となるテーマは、「真の英雄とは何か」、そして「埋もれた真実に対する正義の回復」です。
名誉勲章という形で国が公式にその行為を認めることは、ただの表彰ではなく、戦争で傷ついた人々の尊厳を取り戻し癒す大きな意味があるからです。
ピッツェンバーガーは、自らの命を危険に晒し、仲間のために究極の自己犠牲を払いました。
にもかかわらず、彼の功績は長年闇に葬られます。
映画では、この不条理を若い調査官が突き止め、生存者たちの証言を通じて彼の名誉を回復させようとします。
この過程で、戦争の残酷さ、兵士たちが抱えるPTSDの苦しみ、そして官僚主義の壁といった重いテーマも描かれます。
しかし、それ以上に、人間が持つ究極の献身と、それを忘れずに語り継ぎ、正当に評価することの重要性を力強く訴えかけているのです。
作中で登場する多くの退役軍人は、ピッツェンバーガーの決死の救助に助けられながらも、生き延びた罪悪感を長年抱えています。
その英雄の功績が正式に認められることで、彼ら自身も心から救われる——
そうした人間のドラマがこの作品の根底にあります。
三幕構造で見るストーリー
この映画のストーリーは、典型的な三幕構成で展開されていると理解すると、物語の流れをより深く捉えられます。
- 第1幕(導入):ハフマンが再調査の任務を受ける
- 第2幕(対立・深化):退役軍人たちの証言を集める中で真実に迫り、葛藤する
- 第3幕(解決):正義を押し通し、ついに名誉勲章が授与される
まず第一幕では、現代の調査官ハフマンが、ピッツェンバーガーの名誉勲章案件の再調査を任命されます。
最初は乗り気ではありませんが、退役軍人たちへの聞き取り調査を開始します。
続く第二幕では、ハフマンがベトナム戦争の退役軍人たちを訪ね、彼らの証言からピッツェンバーガーの行動がフラッシュバック形式で描かれる部分です。
この過程で、証言者たちの心の傷や、名誉勲章却下を巡る複雑な情報が明らかになり、ハフマン自身もこの真実と、証言者たちの苦悩に深く引き込まれていきます。
様々な困難や葛藤に直面しながらも、彼は真実の追及を諦めず、核心に迫っていきます。
そして第三幕では、集められた証言と明らかになった真実を元に、最終的にピッツェンバーガーの功績が認められるかどうかの結論が示されます。
この構造により、正義の回復と、英雄への敬意、そして残された者たちの心の癒しという感動的なヒューマンドラマとして成立しています。
作品を理解するための小ネタ

タイトルに込められた意味
この映画のタイトル「ラスト・フル・メジャー」は、単なる作品名以上の深い意味を持っています。
なぜならこれは、リンカーン大統領の有名なゲティスバーグ演説からの引用になっているからです。
1863年、南北戦争のさなかにあったこのゲティスバーグ演説では、「人民の人民による人民のための政治」というフレーズが有名ですよね。
しかしこの演説の主な趣旨は、南北戦争で命を捧げた兵士たちへの敬意と、彼らの犠牲が無駄ではないことを強調するものでした。
戦没者たちの犠牲(ラスト・フル・メジャー)を無駄にしないために、残された自分たちは行動する責任があるということをリンカーンは訴えたのです。
映画ではピッツェンバーガーは命を顧みず人命救助にあたり、究極の自己犠牲と献身を示しています。
この英雄的行為をたたえ、評価し、語り伝えることは残された者たちこそができることなのです。
このタイトルを知ることで、映画が描くのが単なる勲章授与の物語ではなく、国家や大義、そして仲間への「究極の献身」とその評価という、普遍的なテーマであることがより深く理解できます。
象徴的なシーンや描写
映画には、物語に深みを加えるいくつかの象徴的なシーンや描写があります。
例えば、ピッツェンバーガーがヘリから地上へと降下していくシーンは、彼の「使命感」を強く象徴しています。
安全な空から、最も危険な地上の戦場へと飛び込んでいく姿は、彼がどれほど命がけで任務に当たっていたかを示します。
特に撤退するヘリが飛び去る中、彼が一人で地上に残る決断をする場面は、揺るぎない献身そのもの。
仲間を見捨てず、自身の命を犠牲にしてでも救助を続行するという、彼の強い意志の表れです。
また現代のシーンで、調査官が退役軍人たちの「記憶」を一つずつ集めていくプロセスも象徴的ですね。
多くの退役軍人が戦争のトラウマを抱え、過去と向き合うことを避けてきた中、重い口を開き、断片的な記憶を語り始めることで、失われた歴史のピースが少しずつ埋まっていきます。
個人的な記憶の集合体が、やがては「歴史」を形作り、真実を明らかにする力を持つことを示唆しています。
彼らの語りが、ピッツェンバーガーの「遺志」を繋ぎ、最終的に彼の名誉回復へと導く重要な役割を担っているのです。
実話との違い
「ラスト・フル・メジャー 知られざる英雄の真実」は実話に基づいていますが、映画としてのドラマ性を高めるために、いくつかの脚色が加えられています。
最も大きな違いの一つは、調査官スコット・ハフマンの人物像とその役割です。
映画では彼が物語の中心となり、単独で調査を進める姿が描かれますが、実際はそうではありません。
ウィリアム・H・ピッツェンバーガーの名誉勲章授与の再評価に尽力したのは、主に彼の元同僚と、多くの退役軍人たちの長年にわたる草の根運動でした。
ハフマンというキャラクターは、複数の人物の要素を凝縮し、物語を一本の線で繋ぐために創作された側面が強いと言えます。
また、個々の退役軍人たちの証言内容や、彼らが抱える心の傷の具体的な描写も、ドラマとしてより感動的かつ分かりやすくするために再構築されている部分があります。
しかし、これらの変更は、ピッツェンバーガーの英雄的行為の真実性や、彼に名誉勲章が授与されるまでの長い道のりという核となる史実を損なうものではありません。
むしろその重みや人間ドラマをより鮮明に伝えるための演出として機能していると言えるでしょう。
作品の評価・口コミ

レビューサイト 評価 | 総合評価 | 72.83 | |
国内 レビュー サイト | 国内総合評価 | 3.83 | |
Filmarks | 3.8 | ||
Yahoo!映画 | 3.9 | ||
映画.com | 3.8 | ||
海外 レビュー サイト | 海外総合評価 | 69.0 | |
IMDb | 6.8 | ||
METASCORE Metacritic | 51 | ||
TOMATOMETER RottenTomatoes | 6.8 | ||
TOMATOMETER RottenTomatoes | 62 | ||
Audience Score RottenTomatoes | 96 |
心を打つ英雄譚として高い評価
この映画は、戦場の勇気と人間ドラマを描いた点で多くの観客から高く評価されています。
映画レビューサイトでは次のようなコメントが見られます。
- 単なる戦争映画ではなく、生き残った兵士たちの苦悩や、30年越しに名誉が回復される英雄の物語に深い感動
- 戦退役軍人や遺族を丁寧に描いている点に共感
- 調査パートの長さや静かな展開に退屈さを感じるという意見も
主に主題である物語の誠実さと人間味に胸を打たれたという感想が目立ちます。
また退役軍人や遺族を丁寧に描いた姿勢について、多くの視聴者から共感を集めています。
このあたりは日本人には分かりづらい、アメリカが経験してきた歴史を背景にした感動を呼んでいる点もあるでしょう。
こういった点でも、アメリカの歴史を理解するのによい作品だと言えますね。
監督・脚本・キャスト

監督トッド・ロビンソンの情熱
監督トッド・ロビンソンは、この作品を20年以上も温め続けてきた執念の持ち主です。
その理由は、彼がもともとドキュメンタリー作家・脚本家として活動し、ベトナム戦争で名誉勲章を取り逃した兵士たちの記録に強い使命感を抱いていたからです。
実際、この映画のプロジェクトは1990年代からスタートしており、資金難やキャスティングの問題で何度も頓挫。
彼は50社以上の製作会社に企画を持ち込みましたが、実現には至らず、一度は大手スタジオが映画化権を取得するも頓挫するという困難を経験しています。
しかし、彼は諦めず、自身で資金集めに奔走し、ようやく2017年に撮影を開始。
20年以上の想いを経て映画化が実現した作品なのです。
この並々ならぬ情熱が、作品全体のリアリティと深み、そして観客に伝わる強いメッセージの根底にあります。
主演・セバスチャン・スタンの挑戦
主演のセバスチャン・スタンはMCU作品とは全く違う静かな人間ドラマで、新たな俳優像を見せています。
なぜなら彼がこれまで『キャプテン・アメリカ』シリーズのバッキー/ウィンター・ソルジャー役でアクション俳優として広く知られてきたからです。
本作ではそのイメージとは全く異なる、内省的で繊細な演技を披露しています。
ハフマンは当初は乗り気ではないながらも、退役軍人たちの生々しい証言に触れ、徐々に物語の真実と、彼らが抱える心の傷に引き込まれていきます。
スタンはこのキャラクターの内面的な変化と葛藤を丁寧に演じ切り、観客が物語に感情移入する上での重要な役割を担っています。
彼の演技は、単なるヒーローではない、一人の人間としての深みを求める俳優としての挑戦であり、その成功が作品の説得力を高めています。
名優たちが支える退役軍人の物語
この映画の最大の魅力の一つは、物語の語り部となる退役軍人たちを演じる、文字通り「オールスター」とも呼べる豪華なベテラン俳優陣です。
彼らは、サミュエル・L・ジャクソン、エド・ハリス、クリストファー・プラマー、ウィリアム・ハート、ピーター・フォンダ、ダイアン・ラッドなど、映画史に名を刻むレジェンドたち。
特に『イージー・ライダー』で有名なピーター・フォンダはこの作品が遺作となり、まるで「自分自身の戦後を語るかのような役柄」で深い余韻を残します。
実際にアメリカの歴史を体現するような存在感を放っており、演じる退役軍人の言葉と表情には、圧倒的な説得力と重みが宿っています。
彼らが過去の記憶を語るシーンは、長年抱えてきた心の傷や後悔、そしてピッツェンバーガーへの尊敬の念が滲み出ており、その存在感が作品に比類ないリアリティと感動を与えています。
彼らの演技なくして、この映画の成功はあり得なかったと言えるでしょう。
まとめ

まとめ
- 『ラスト・フル・メジャー 知られざる英雄の真実』は、ベトナム戦争で究極の自己犠牲を払った勇敢な兵士をめぐる感動の実話
- 英雄ピッツェンバーガーの名誉回復を30年越しに果たす物語で、そこには国家の事情や助けられた戦友たちの想いが複雑に絡まり合った深い背景があった
- 「ラスト・フル・メジャー」というタイトルはリンカーン演説からの引用で、「究極の自己犠牲」のことであり、残された者が選択する未来こそが大事だというメッセージが込められている
- 退役軍人たちの記憶を繋ぐことで失われた歴史のピースが埋まっていく過程、真実を追い求める人間の尊厳と正義の回復を映画を通して追うことができる
- 監督トッド・ロビンソンは20年以上かけ映画化を実現し、主演スタンの静かな熱演、往年の名優たちの魂を揺さぶる演技が感動を呼び起こす。
『ラスト・フル・メジャー 知られざる英雄の真実』は、単なる戦争映画ではありません。
一人の英雄の真実を追い求める中で、究極の自己犠牲とは何か、そして歴史が私たちに何を語りかけるのかを深く問いかける作品です。
監督の長年の執念、豪華ベテランキャスト陣の魂を揺さぶる演技、そして観客が涙した感動の物語は、きっとあなたの心にも深く刻まれることでしょう。
この映画を通して、ベトナム戦争という遠い時代の出来事が、現代を生きる私たちにとっても決して無関係ではないこと、そして過去を知ることが、未来をより豊かにする教養となることを実感していただけたのではないでしょうか。
さあ、次はあなたが歴史を「体験」する番です。
もしこの映画に興味を持ったら、ぜひ一度鑑賞してみてください。
一本の映画が、あなたの知的好奇心を刺激し、世界をより深く理解するための新たな扉を開いてくれるはずです。
歴史は、決して教科書の中だけの話ではありません。
映画という形で触れることで、あなたの教養は自然と深まり、日々のニュースや社会の出来事を多角的に捉える力が育まれることでしょう。
さあ、あなたも「歴史を学ぶ」という知的冒険の旅に出てみませんか?

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